地方在住インドネシア人と地域の人々が協働してつくりだす 「外国人材でつながる」文化

「実習生」という存在によってつながれようとしている地域は、まったく異なるお互いの価値観や文化や風習を、少しずつどうにかしながら、その先を目指そうとしています。それは、まだ見ぬものを不安ではなく、未来として受け取ろうという態度です。その前向きな姿を、文化が生まれ出る瞬間を、見たい、かかわりたい。そう思っています(門脇篤)

課題と目的

私たち特定非営利活動法人地球対話ラボは、これまで気仙沼とジャワをフィールドに、技能実習生の思いや送り出し・受け入れ体制、帰国してからの状況などをリサーチしてきました。

少子高齢化や人口減にともない、実習生をはじめ外国人材がふえていく中、彼らをどう受け入れるかという実践は、自分たちの社会をどうしていきたいかということにほかなりません。

見えてきたのは、実習生のふるさとの多様性、日本とは異なった文化、ひとりひとり固有のストーリーであり、そうしたこと抜きに単なる労働力としてしか彼らをとらえないとすれば、それは大きな損失であること、逆に日本が単なる仕事場だったとしたら、それは彼ら自身はもちろん、彼らを送り出している地域にとっても大きな損失であるということです。

私たちがこのプロジェクトを行なっていく目的は、今の状況から一歩踏み出し、地方が諸外国と「外国人材でつながる」というこれまでになかった状況の中で、日本と諸外国が互いに新しい文化を育むプラットフォームを構築していくことにあります。

活動内容

▼前半(2020年11月〜):両地域の現状や課題分析、アイデアの蓄積

⑴地域の人々と実習生などの外国人材が相互に取材者となり、外国人材や受入企業、まちの人にインタビューし映像を制作。ウェブ配信し、外国人材の故郷の人々とも共有していきます。

⑵外国人材と市民、子どもたちが、さまざまな協働を行うカフェの運営や地域の学校での交流を行います。

<進行中のプロジェクト>新型コロナの影響から企画内容を大きく変更しつつ、日々試行錯誤の中、以下を実施中です。
①オンラインおしゃべり広場  詳細はこちら
②実習生YOUTUBERのチャンネルに日本語字幕をつけるプロジェクト 再生リスト

▼中盤(2021年夏〜):前半の分析やアイデアをもとに、ポノロゴ市が進める「日本人文化村」エリアと連携し、相互訪問やローカルな祭り参加を行い、成果を公共施設で公開します。

▼後半(2022年〜):日本・インドネシア双方で、外国人材と市民を巻き込んだコミュニティアート、ドキュメンタリー製作、映画祭を実施。両地域で長いスパンにわたって共有されうるよう、紙やネット媒体、映像など多様なメディアによって公開していきます。

成果と発信

外国人材や受入企業へのインタビュー、外国人材と市民の日常的な交流実践、プロジェクトチームによる相互訪問などは、プロジェクトの段階ごとに短編映像に編集して公開。最終的に2時間程度の長編ドキュメンタリーを制作します。また、「気仙沼・インドネシア映画祭」として日本・インドネシア双方で上映します。図書館や博物館施設等である程度の期間上映するとともに、映像資料として常時一般からアクセスできるようにします。

コミュニティアートの中で生まれる互いの地域への理解から生まれた表現や実践は、外国人材とのつながりから生まれた新たな文化として、それぞれの地域の代表的な祭り「気仙沼みなと祭り」「レオ・ポノロゴ」などと連携し、鑑賞型というよりも体験的に共有していける方法で発信していきます。

こうした取り組みにより、気仙沼とポノロゴのユニークな関係性が可視化され、そこで働くことやそこからの人材を受け入れることが、単なる労働の移動にとどまらない地域間でつくる文化へつながっていきます。外国人材でつながったインドネシアと日本のさまざまな地域が、新たな文化を創造するパートナーとなりうるひとつのモデルケースになっていきます。

これまでにできた映像

助成

トヨタ財団

YS市庭コミュニティー財団

KDDI財団

少子高齢化が進み、働き手が確保できない日本の地方で、「外国人でもいいから」と相手のバックボーンもわからずにいつしかたくさんの言葉もよく通じない、お互いに知り合う機会もない人たちと隣り合わせになった。あるいは地元に働き口がないがゆえに国内外へ出稼ぎに出る人が多く、たまたま選んだのが日本で、いったいどんなところかもわからずにやって来て、仕事も合わず、食事も合わず、職場と部屋を行き来するだけ。そういう切り取り方をすれば、技能実習生をという存在も、ある意味ではネガティブなものと言えるかもしれません。

しかし、彼らと関わり、いろいろな話を聞く中で、彼らは私にとって、ひとりひとりかけがえのないその人になっていきました。「もう仕事を辞めたい」とメッセージをくれた実習生が、その後地元のバドミントンクラブに入ったことで「おかげさまで毎日楽しいです」と返してきたり、実習を終えて帰国した実習生がSNSの無料通話で「また会いたいです。インドネシアの僕の家に来てくださいよ」と電話してきたり。

実習生のふるさとを訪ねる経験は、彼らへの見方をさらに変える体験でした。気仙沼の実習生のふるさとのひとつである東ジャワのポノロゴは、「レオ・ポノロゴ」という祭りで知られています。実習生たちからはそれを「踊り」と聞いていましたが、それは私が思う「踊り」とは全く違うものでした。シャーマンが先導し、本物のくじゃくの羽や虎の毛皮で作った巨大な面をつけて狂ったように踊り、途中で食事の場があり、「フルセットだと4〜5時間かかる」という、それは私が知っているものとは違う範疇の何ものかでした。

こうした驚きを共有したい。彼らがこんなところからきているのだということを伝えたい。そう思います。

実習生について、安い労働力として使い捨てにしているといったことが言われることもありますが、実際に私が出会った彼らはそんな「弱者」ではありません。日本での経験もなにもかも、すべて引き受け、自分の糧にして、自分や自分のまわりの人間が豊かに、幸せになれるようにと努力を重ねています。そのバイタリティこそ、日本に住む私たちが学ぶべきものだと思います。

「実習生」という存在によってつながれようとしている地域は、まったく異なるお互いの価値観や文化や風習を、少しずつどうにかしながら、その先を目指そうとしています。それは、まだ見ぬものを不安ではなく、未来として受け取ろうという態度です。その前向きな姿を、文化が生まれ出る瞬間を、見たい、かかわりたい。そう思っています(門脇篤)